最高裁判所第二小法廷 昭和30年(あ)2430号 決定 1958年2月28日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人柳瀬宏の上告趣意第一点について。
所論は違憲をいうも訴訟法違反の主張に過ぎず刑訴四〇五条の上告理由に当らない。記録に徴するに弁護人より、第一審裁判所に対し、第一審第三回公判調書に於ける公判手続を更新した旨の記載その他に関し公判調書の記載の正確性について適法に異議申立のなされたに拘らず、同裁判所は刑訴五一条一項、刑訴規則四八条に定めた手続を行わなかったことは所論のとおりである。従って第一審第三回公判調書に、公判手続を更新した旨の記載があるからといって、刑訴五二条を適用して直ちに右公判手続の更新が行われたものと認めることはできない。しかし被告人及び弁護人は右第三回公判期日はもとより、その後の公判期日にも出廷して右公判手続の更新について別段刑訴三〇九条一、二項の異議を申立てることもなく証人の尋問その他の訴訟行為をし、最終の弁論、陳述をもして結審しているのであるから、第一審裁判所は右第三回公判期日には同調書記載のとおり、刑訴規則二一三条の二所定の更新の手続を行ったものと認めるのを相当とする。従って所論第一審第二回公判調書中の証人近藤秀雄の供述記載をも適法に証拠調をしたものと認められる。してみれば右第三回公判期日には公判手続が更新され、所論証人近藤秀雄の供述記載も適法な証拠調手続を経たものとした原判決の判断は結局正当である。
同第二点は事実誤認の主張であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって刑訴四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)